薬剤師の働き先は、病院、調剤薬局、ドラッグストア、製薬企業、公務員(公立病院など)と幅広く、勤務先によって企業年金の有無や種類が大きく違います。実はこの違いが、iDeCo(個人型確定拠出年金)で毎月いくらまで積み立てられるか?つまり節税できる枠の大きさを左右します。2026年末には制度改正も控えています。この記事では、薬剤師がiDeCoを始める前に押さえる「自分の上限額の確認」を中心に、特定の商品を勧めるのではなく考え方として整理します。
iDeCoの基本:3つの税制メリット
iDeCoは、自分で積み立てて運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金です。税制上のメリットは大きく3つあります。掛金が全額所得控除になること、運用益が非課税になること、受け取り時にも控除があることです。とくに掛金の所得控除は、その年の所得税・住民税を軽くする効果があり、安定収入のある薬剤師にとって使いやすい制度です。
2026年9月の上限を勤務先の制度で確認する
企業年金のない会社員は原則月2.3万円、企業年金がある会社員等は原則月2万円を上限に、月5.5万円から企業型DC事業主掛金とDB等の掛金相当額を差し引いた範囲で決まります。公務員は原則月2万円です。勤務先の制度により拠出できない場合もあります。
企業型DCのマッチング拠出との併用はできないなど、上限額以外の条件も確認します。薬局・病院などの業態だけで判断せず、人事に企業年金の有無と掛金相当額を確認しましょう。
2026年12月1日施行予定の改正後も勤務先別に計算する
改正後は会社員等の共通する合計枠が月6.2万円になり、企業年金のない会社員はiDeCoで月6.2万円まで、企業年金がある場合は事業主掛金・DB等掛金相当額を差し引いた範囲になります。公務員で共済掛金相当額8,000円なら月5.4万円です。
国民年金第1号被保険者は、国民年金基金や付加保険料等との合計枠が月7.5万円となる予定です。年齢拡大にも過去の加入・年金受給状況等の条件があります。金融機関の変更受付と反映月を確認し、施行前後を混ぜて設定しないようにします。
引出し制限と受取時の税金を確認する
iDeCoは原則60歳まで引き出せず、受給開始年齢は通算加入者等期間などでも変わります。短期の教育費や転職期間の生活費は、別に現金で確保します。
一時金で受け取る場合には、退職手当と加入・勤続期間が重複すると退職所得控除の調整が生じることがあります。受取順序と年、過去の受取額で扱いが異なるため、「一定年数ずらせば必ず非課税」と考えないようにします。
転職・退職をしたら手続きを忘れずに
薬剤師は、薬局から病院へ、企業から薬局へといった転職も珍しくありません。iDeCoは、転職や退職で勤務先の区分が変わると、掛金の上限が変わったり、登録情報の変更手続きが必要になったりします。とくに企業型確定拠出年金(企業型DC)のある勤務先を辞めたときは、その資産をiDeCoへ移す手続き(移換)が必要になる場合があります。手続きをしないまま一定期間が過ぎると、資産が自動的に移されて手数料がかかり、その間は運用もできない状態になることがあります。転職の際は、加入している運営管理機関に早めに連絡するのが安心です。
転職時は移換と毎月額を一緒に確認する
企業型DCの加入資格を失った場合、原則6か月以内に移換等の手続きが必要です。自動移換になると運用が止まり手数料も生じるため、退職前に案内と窓口を確認します。
転職後の手取りが月2万円増えても、全額をiDeCoへ入れる前に引越し費や新しい通勤費を見ます。勤務先の制度と家計の両方が分かると、NISA・預金との配分を自分の条件で決められます。