不動産投資の提案で「所得税が戻る」と説明されても、それだけでは投資として成り立つか判断できません。医師のように収入が大きい場合も、税金が減る額と、返済後に手元に残る現金は別です。物件の収支、借入れ、将来の売却まで分けて確認しましょう。
減価償却はその年の現金支出とは限らない
建物などの取得費を、使用できる期間に配分して必要経費にするのが減価償却です。土地は減価償却の対象ではありません。減価償却費を計上した年に、同額の現金が出ていくわけではないため、帳簿の赤字を実際の現金赤字と同じに扱うことはできません。
一方、ローンの元本返済は現金が出ていきますが、通常そのまま不動産所得の必要経費にはなりません。支払利息と元本返済を分けることが、提案書を読む最初のポイントです。
同じ物件を損益と資金繰りの二つで見る
年間家賃収入120万円、管理費・税金等30万円、借入利息20万円、減価償却費80万円、元本返済40万円とする仮の例です。取得時の費用や所得税等は含めません。
| 見方 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 不動産所得の計算例 | 120-30-20-80 | 10万円の赤字 |
| 年間の現金収支 | 120-30-20-40 | 30万円の黒字 |
この例では、帳簿は赤字でも現金は黒字です。逆に空室や大規模修繕で現金が不足する場合もあります。節税の説明を確認するときは、この二つの表を同じ前提で作ってもらいましょう。
不動産の赤字を全額通算できるとは限らない
不動産所得の損失は一定の範囲で他の所得との損益通算の対象になりますが、土地取得のための借入金利子に相当する部分など、通算できないものがあります。建物の耐用年数や取得費の配分も、提案上の数字をそのまま採用せず確認します。
減価償却費が大きい時期と小さくなる時期では課税所得が変わります。売却時の譲渡所得の計算にも減価償却が関係するため、初年度の還付額だけを投資成果と考えないことが大切です。
家賃下落・空室・修繕を加えた試算を見る
家賃収入120万円の計画でも、家賃10万円の月が2か月空室なら収入は100万円です。先ほどの現金黒字30万円は、他の条件が同じなら10万円に縮みます。さらに修繕費がかかれば持ち出しになる可能性があります。
管理委託費、修繕積立金の変更、固定資産税、保険、金利上昇、退去費用を含めて比較します。家賃保証という名称があっても、賃料改定や解約の条件を契約で確認します。将来の売却価格と、売却時のローン残高にも目を向けましょう。
開業資金や家計の積立と並べて判断する
不動産は売却に時間や費用がかかり、購入時の価格で換金できるとは限りません。開業、教育費、住宅購入を控えているなら、そのための自己資金と借入余力に影響しないかを確認します。
不動産を持つこと自体を目標にせず、預金、NISA、iDeCoと比べて、自分の将来収支にどの役割を持たせるのかを整理します。税金を減らす話を、手元に残る資産と家計の安定まで広げて考えることが、提案を見極める基準になります。