年末調整が済んでいても、確定申告で使える所得控除があります。ただし、支出した金額がそのまま戻るわけではありません。仕事の研修費や家族の治療費を整理するときは、対象になる支出、差し引く補填金、勤務先の証明を確認しましょう。控除のために支出を増やすより、実際に払った費用を漏れなく把握することが先です。
特定支出控除は勤務先の証明などが必要
給与所得者の特定支出控除は、一定の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1を超える場合に、その超える部分を給与所得から差し引く制度です。通勤、職務上の旅費、転居、研修、資格取得、帰宅旅費、勤務必要経費などが対象区分に含まれます。
対象性について給与の支払者の証明が必要となるなどの条件があります。資格の名前だけで認められるわけではなく、職務に必要な支出であるかを確認します。非課税の補填を受けた部分は除き、勤務必要経費には合計65万円の上限があります。
給与収入600万円の計算例
給与収入600万円に対応する給与所得控除額が164万円の場合、特定支出控除の判定基準はその半額の82万円です。条件を満たす自己負担の特定支出が90万円なら、超過額8万円が特定支出控除の対象になります。
90万円を使ったから90万円の税金が戻るわけではありません。所得税率10%なら、8万円の所得減による所得税の軽減は単純計算8,000円で、復興特別所得税や住民税などは別に考えます。支出の必要性と節税効果は分けて判断しましょう。
医療費控除では補填金と所得を確認する
医療費控除は、本人が自分や生計を一にする配偶者・親族のために支払った対象医療費から、保険金等で補填される金額を差し引いて計算します。そこから原則10万円、総所得金額等が200万円未満ならその5%を差し引き、控除額は最高200万円です。
例えば対象医療費25万円、その医療費を補填する保険金5万円、足切り額10万円なら、控除額は10万円です。高額療養費なども補填金の確認が必要です。補填金が特定の医療費を上回っても、その余剰を他の医療費から差し引く扱いではありません。
セルフメディケーション税制は選択制
一定の健康診断や予防接種などの取組を行う人が、対象医薬品を購入した場合、年間1万2,000円を超える部分を控除できる制度です。控除の上限は8万8,000円で、通常の医療費控除と併用できません。薬局で買った商品がすべて対象になるわけではありません。
領収書や医療費通知を整理し、通常の医療費控除とどちらが適用できるか比較します。通院交通費も対象となる条件を確認し、日付、受診先、金額を記録しておきます。
申告後の余裕資金も家計に組み込む
申告には、源泉徴収票、医療費控除の明細、補填金の資料、特定支出の証明などを準備します。対象の所得年と申告期限を国税庁で確認し、還付申告や期限後申告を通常の期限内申告と混同しないようにします。
還付や翌年度の税負担軽減があっても、一度きりの金額と毎年続く余裕資金は別です。医療費の予備資金を確保したうえで、残りを預金やNISAなどにどう回すか考えると、控除の確認を将来の資産形成につなげられます。