准看護師から看護師に進むには、学費に加えて在学中の収入減も負担になります。この記事では、准看護師と看護師の賃金差、進学課程の学費、専門実践教育訓練給付金をもとに、進学費用を何年で取り戻せるかを仮の条件で試算します。
准看護師と看護師の賃金差は年70万〜100万円が目安
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとにすると、看護師の年収は約524.7万円です。同じ調査の集計で、准看護師は約427.5万円とされており、平均の差は約97万円になります。
ただし、この差をそのまま使うと回収年数を短く見積もりすぎます。准看護師の平均年齢は51.8歳、勤続13.6年とされ、看護師の42.1歳より高いためです。30代で比べると、30〜34歳で約101万円、35〜39歳で約124万円の差があると集計されています。
一方で、同じ病院で資格だけが変わる場合は、資格手当や号俸の差しか増えないこともあります。厚生労働省が派遣労働者の賃金の基準として令和8年度に示した職種別の時給換算額では、勤続10年で看護師2,122円、准看護師1,744円です。この差378円に月156時間、12か月を掛けると年約70.8万円になります。以下の試算では、控えめに年70万円の差を使います。
准看護師が通える進学課程と学費の目安
准看護師が看護師国家試験の受験資格を得るには、2年課程の看護師養成所や短期大学に進むのが一般的です。全日制は2年、定時制は3年が多く、通信制は2年以上です。通信制は就業経験が一定年数以上ある准看護師が対象で、2018年4月に必要な年数が10年以上から7年以上に改められたと自治体が案内しています。年数は自治体の案内で記載が異なるものもあるため、志望校の募集要項で確かめましょう。
学費は学校によって大きく異なります。医師会立の養成所が公表している2023年度の例では、入学金30万円、授業料が年42万〜46万円程度でした。ほかに実習費や教科書代、施設費がかかるため、志望校の募集要項で総額を確認しましょう。
専門実践教育訓練給付金で戻る額
厚生労働大臣が指定した講座であれば、雇用保険の専門実践教育訓練給付金(学費の一部が戻る制度)の対象になります。ハローワークの案内では、受講開始日までの雇用保険の加入期間が3年以上、初めて受け取る場合は2年以上が条件です。
給付率は教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が基本です。雇用されたまま目標の資格を取ると70%(年間上限56万円)に上がります。2024年10月1日以降に受講を始め、修了後の賃金が受講前より5%以上上がれば80%(年間上限64万円)になります。
事前に訓練前キャリアコンサルティングとジョブ・カードの交付を受け、受講開始日の2週間前までに受給資格の確認を済ませます。対象になるかどうかは、厚生労働省の講座検索システムで学校ごとに確かめられます。
進学費用は何年で取り戻せるかを試算する
たとえば次のような人を考えます。35歳の准看護師で、病院の病棟に常勤で勤め、年収は約390万円です。学費は初年度75万円(入学金30万円と授業料45万円)、2年目以降は授業料45万円と仮定し、雇用されたまま資格を取って70%の給付を受けるとします。
計算例として、通信制2年で常勤を続ける場合を示します。学費120万円に、実習やスクーリングで夜勤や勤務を減らす収入減を年20万円×2年で40万円と見込み、合計160万円です。給付金は52.5万円と31.5万円で84万円となり、実質負担は76万円です。年収差70万円で割ると約1.1年、給付金なしでは約2.3年で回収する計算です。
| 進学の仕方(仮の条件) | 学費と収入減の合計 | 回収年数(給付金なし) | 回収年数(給付金70%) |
|---|---|---|---|
| 通信制2年・常勤を続ける | 160万円 | 約2.3年 | 約1.1年 |
| 定時制3年・時短勤務(収入減年80万円) | 405万円 | 約5.8年 | 約4.1年 |
| 全日制2年・非常勤(収入減年200万円) | 520万円 | 約7.4年 | 約6.2年 |
回収年数を左右するのは学費よりも在学中の収入減です。給付金の対象講座で、常勤を続けながら通えるなら、看護師として働き始めてから約1年が目安になります。
病院勤務の准看護師が確かめたい奨学金と夜勤手当
病院によっては、准看護師の進学を支える修学資金や学費補助を用意しています。卒業後に一定期間その病院で働けば返還が免除される仕組みが多く、試算の学費負担をさらに減らせます。一方で、免除期間の途中で辞めると返還を求められるため、進学先と同じくらい契約の条件が大切です。
勤務先から学費補助を受けた場合に、給付金の計算で教育訓練経費がどう扱われるかは、事前にハローワークで確かめておくと安心です。
夜勤手当も回収年数に影響します。厚生労働省の職業情報でも、夜勤がある職場では回数に応じて夜勤手当が付くとされています。資格が変わったあとに夜勤の回数や単価が変わるかは病院の給与規程しだいで、変われば年収差が試算より広がることも縮むこともあります。
進学を決める前に書き出す数字
最初に、勤務先の給与規程で看護師と准看護師の基本給表、資格手当、夜勤手当の単価を並べ、資格が変わったときの年収差を書き出しましょう。次に、志望校の募集要項から学費の総額と、実習で勤務を減らす期間を拾い、在学中の収入減を見積もります。
最後に、講座検索システムで給付金の対象かを確かめ、ハローワークで自分の雇用保険の加入期間を確認しましょう。学費と収入減の合計から給付金を引き、年収差で割れば、自分の回収年数が出ます。