「学校に来た保険の人に勧められてドル建ての保険に入ったけど、このまま続けたほうがいいんでしょうか」という質問は、30代の先生や公務員の方からとても多く寄せられます。今やめると払った額より戻りが少ないため、判断を先送りしがちです。仕組みと費用、試算の方法、答えが人によって変わる条件を整理します。
外貨建て保険は保障と運用が一体の商品
外貨建て保険は、保険料を米ドルなどの外貨で運用し、保険金や解約返戻金(途中でやめたときに戻るお金)も外貨で計算する保険です。円で受け取る額は為替相場で変わり、外貨で増えていても円高になれば円では減ることがあります。
変額保険は、保険料の一部を特別勘定(株式や債券で運用する口座)で運用し、実績によって解約返戻金や満期金が増減する保険です。死亡保険金に最低保証がある商品でも、解約返戻金には最低保証がないのが一般的です。
契約から年数が浅いうちの解約は、払込額を下回りやすくなります。契約初期の費用が差し引かれることと、解約控除(途中解約で差し引かれる費用)がかかる商品が多いことが主な理由です。金融庁の保険モニタリングレポート(2025年)も、販売手数料の見直しに合わせて「契約初期費用や解約控除」の引下げを検討する保険会社があると記しています。
解約返戻金を払込累計と為替で試算する
損得は、外貨建ての解約返戻金を今の為替で円に換えた額と、これまで円で払った累計を比べて判断します。以下は仮の数字による試算で、実際の金額は契約ごとに異なります。
月100ドルの保険料を5年間払い、払込時の平均為替が1ドル145円だったとします。払込累計は6,000ドル、円では87万円です。5年時点の解約返戻金が払込額の75%の4,500ドルとすると、1ドル160円で72万円、145円で65万2,500円、130円で58万5,000円になり、円安でも15万円の差が残ります。87万円に届くには、1ドル約193円の円安が必要な計算です。
同じ契約を15年続けて解約返戻金が払込額の105%になっても、払込時の平均が145円なら、円での損益分岐は約138円です。外貨で増えていることと、円で増えていることは別に確かめる必要があります。
公務員は共済の保障を先に数える
公務員は共済組合の遺族年金などの給付に加え、職場の団体保険に加入できる場合があります。死亡保障を上乗せする必要があるかは、これらを差し引いた不足額で考えます。
外貨建て保険の死亡保障が共済や団体保険と重なっていれば、保障の面で続ける理由は弱くなります。給付の種類と額は、加入している共済組合の案内で確認できます。地方公務員は団体保険の有無や内容が自治体や共済組合によって異なるため、勧められた保険が共済組合の団体保険か、保険会社の個人契約かも確かめておきましょう。
相談で多い質問
国民生活センター(2020年2月公表)は、外貨建て生命保険は為替相場の変動や運用実績で損益が生じ、元本割れのリスクがあると注意を呼びかけています。そのうえで、相談の場で特によく出る質問に答えます。
「NISAのような保険だと思って入ったのですが、何が違うのですか」。保険料には保障の費用や契約を維持する費用、円と外貨を交換する為替手数料が含まれ、全額が運用に回るわけではありません。NISA口座で買う投資信託とは、制度も税の扱いも異なります。
「今解約すると損なので、払済にしたほうがいいですか」。払済保険(保険料の払込みを止め、その時点の解約返戻金をもとに保障額を小さくした保険に変える方法)は、損失を確定させずに先送りする方法です。保障額は下がり、特約は原則として消え、外貨建てなら為替の影響も残ります。
「円安で増えたので、解約か別の保険への切り替えを勧められました」。円安で円換算額が増えても、払込時の為替と比べなければ実際の損益は分かりません。切り替えは新しい契約になり、初期費用や解約控除の期間が改めて始まることがあります。
自分の場合で答えが変わる条件
同じ「続けるか、やめるか」でも、答えは契約と家計の条件で変わります。主な条件は次の4つです。
1つ目は解約返戻金の推移で、外貨で払込額を上回る年がいつかです。2つ目は使う時期と為替の水準で、円での損益分岐が何円かです。3つ目は共済や団体保険を差し引いた保障の不足額、4つ目はNISAなど他の資産とあわせた積立の配分です。
| 選択肢 | 保障と今後の保険料 | 注意すること |
|---|---|---|
| 続ける | 保障を維持し、保険料も払い続ける | 為替と費用の影響を受け続ける |
| 払済 | 保障を小さくして残し、払込みは止まる | 特約が消え、損失は確定しないまま残る |
| 解約 | 保障はなくなり、解約返戻金を受け取る | 早期ほど払込額を下回りやすい |
| 減額 | 保障と保険料を減らして続ける | 減らした部分は解約扱いになる |
保険料を払った本人が受け取る解約返戻金は、払込保険料の総額を上回ると一時所得になります。国税庁の説明(令和8年4月1日現在)では、受取額から払込保険料と特別控除50万円を差し引き、その2分の1が課税対象です。
まず毎年届く契約内容のお知らせで、現在の解約返戻金と払込保険料の累計の欄を書き出しましょう。次に設計書の推移表で外貨で払込額を上回る年を探し、円の払込累計を外貨の解約返戻金で割って、自分の損益分岐の為替を計算してみてください。